「COVERS」（15）お櫃、ごはんが美味しくなる。
フェースブックにはカバー写真を設定することが出来る。皆それぞれに気に入った写真をアップロードしてコメントを書く。僕は厨房仕事に欠かせない道具をカバーすることにした。COVERSというのは僕の大好きな音楽家のCDだ。有名な曲の「替え歌」が演奏されている。料理のレシピというのは大昔から家庭でそれぞれに奏でられている音楽のように思う。誰かに習い、毎日奏でる。皆同じ様に見えながら二つとして同じものはない。私達一人一人が違うように。「商品化された食事」は自分らしさを殺す。自分らしく生きるために僕は今日も道具たちと厨房に立ち、料理を作る。このシリーズはこちら。
「ご飯」大好きだ。どうしても食べたくなる。人が集まるとはちらし寿司を作った。大阪では箱寿司を作るための「箱」を買った。30代に始めた玄米食は圧力鍋で炊いて「御櫃（今持っているのは2代目だ）」で保存した（これがものすごくうまかった）。三度の飯よりご飯が好きだった。チャーハン、ドリア、リゾット、オムライス大好きだ。コンビニで新しいおにぎりが出たらまずは食べてみた。
昨今の「糖質制限」ブームは気に入らない。デブの原因は糖質だからご飯を食うな、パスタは止めろ、餅食ったら豚になる、こんなもの食うのは「馬鹿だ阿呆だ」「自己管理ができない証拠だ」などと言いたい放題である。なぜか医者にはデブがいない。営業に比べれば先生先生と尊敬されるお気楽な商売だ、悔しかったらドブ板営業やってみな。自分がデブで無いとデブが馬鹿に見えるのだろう。そんな連中に食事指導できるわけが無い。
体重は見た目でわかりやすい検査値だ。そして「我慢できなくて食い過ぎているからデブになる」と信じられているのが厄介だ。では、「ガン、認知症や心疾患や循環器、壊疽に肺炎、眼底網膜症に腎不全」といった生活習慣病はデブの専売特許だろうか？2015年からのスタディで色々なことを知った。医者・栄養士だろうがプログラマだろうが、職の貴賎なく人生の最後に災厄は訪れる。検査値は決して健康というご褒美のためのための通知表では無い。「検査値」と「災厄」は相関関係はあるが因果関係は無い。マーカーを落としてもガンは無くならない。
炭水化物は魅力的だ。誰も抗えない魅力がある。しかし、「満腹力」が強いから食事が「私というコロニー」に運んでくるの大事な「生命＝乾燥・精製で失われる細胞に含まれる代謝物に溢れた水」を食卓から追い出すのだ。僕はそう仮説している。80年間で何が変わったのかを探したのだ。
https://masaya50.hatenadiary.jp/entry/20180919/1537320596
この数年、毎日三回、素材から「炭水化物抜きで満足できる食事」を作っているのは、「商品化された食事」が炭水化物中心のものだからだ。よく売れて利益率の高い商品として「炭水化物」は最適なのだ。そしてそんなこと（毎日の食事を作り続けること）が可能かどうか試しているのだ。
人は皆違う。何を食べたいかはとても大事な自分らしさである。あらがえない魅力に溢れた「嗜好品」は否応なく食卓を「炭水化物一色に」変え、その人らしさを奪ってしまう。
かつて家族という「強制する食事ルール」は「自分らしく生きようとする私」を守っていたのだ。なんでも食うことができると言っても、さすがにふぐや毒キノコは命に悪い。（食事を厳しくルールする）宗教の起源であるかもしれない。
しかし今では利益率の高い商品を従順に消費する「私」でしかない。新しいデザートや健康にいいという弁当に群がる姿を見ると憂鬱になる。
多すぎる嗜好品は今の世の中を写している。スーパーやコンビニを見回せば「炭水化物」が所狭して並んでいる。それで商売をしている人たちのなんと多いことか。社会の問題なのだ。
僕は時折ご飯を食べる。少し食べる。ばくばく食っていたあの頃よりも美味しさがわかってきたような気がする。
しかし、酒はとどまることを知らない（笑）。人生が辛い時、嗜好品は心を助けてくれる。家族が助けてくれていた時代はもう戻ってこない。私たちは切り離された個人として現実に向き合わなければならない。「抗鬱剤」や「医者の権威」「ブラックな組織に忖度する心（パートタイム・スレィブ）」「ドラッグ」。
嗜好品が溢れる社会はどこかに歪みが隠されている。戦後の混乱期に「ヒロポン」と名つけられて覚せい剤は合法だった。今やアメリカに限らず多くの国で当麻は合法化されている。そう考えれば、自由は決して幸せのバロメータでは無い。
人生は苦痛の連続だ。
人生は我慢大会ではないが、耐久試験でもない。自分を気遣い、愛してくれる人とともにつつがなく人生を過ごしたい。
贅沢な夢だ。
だが諦めることはない。そして自分が変わることでしか社会は変わらない。
