「COVERS」(25)大鍋

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銅なべは母が山菜を茹でるのに使った。
この大きな鍋が自慢だった。おそらく結婚した当時(1955年)から使っていただろう小さなアカナベより大きな鍋が欲しかったのだろう。
たしか僕が大学に入ってから買ったと思う。
いつの間にか2つに増えたが考えてみると、僕が結婚した記念だろうか。
もう一つくらい買わせてあげたかった。

大なべは「平野屋」という父の実家(海産物問屋)で使われていた。
平野屋では当時ごま豆腐とクルミ豆腐を手でこねて作っていた。僕が一緒に働きだした頃は規模を縮小しているときだった。
結局は廃業することになるのだが、大手のスーパーから仕入れを切られた頃のことは忘れられない。

今では、毎年タケノコを茹でるのに活躍している。

右上のしゃぶしゃぶ鍋は大阪にいた頃買った。なかなか凝った作りの鍋だ。
この道具は、僕と一緒に消えるのだろうかなあ。


フェースブックにはカバー写真を設定することが出来る。皆それぞれに気に入った写真をアップロードしてコメントを書く。僕は厨房仕事に欠かせない道具をカバーすることにした。COVERSというのは僕の大好きな音楽家のCDだ。有名な曲の「替え歌」が演奏されている。料理のレシピというのは大昔から家庭でそれぞれに奏でられている音楽のように思う。誰かに習い、毎日奏でる。皆同じ様に見えながら二つとして同じものはない。私達一人一人が違うように。「商品化された食事」は自分らしさを殺す。自分らしく生きるために僕は今日も道具たちと厨房に立ち、料理を作る。このシリーズはこちら