「COVERS」(12)ルクルーゼ

フェースブックにはカバー写真を設定することが出来る。皆それぞれに気に入った写真をアップロードしてコメントを書く。僕は厨房仕事に欠かせない道具をカバーすることにした。COVERSというのは僕の大好きな音楽家のCDだ。有名な曲の「替え歌」が演奏されている。料理のレシピというのは大昔から家庭でそれぞれに奏でられている音楽のように思う。誰かに習い、毎日奏でる。皆同じ様に見えながら二つとして同じものはない。私達一人一人が違うように。「商品化された食事」は自分らしさを殺す。自分らしく生きるために僕は今日も道具たちと厨房に立ち、料理を作る。このシリーズはこちら



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父と母の実家には大きなサクランボが2本あった。近くに女子校があり、グランドまでの高校生の通り道で、実のなる時期には前を通る生徒たちの歓声(キョウセイ)が実が熟したを教えてくれた。酸味の強い実がなるが8割がたは鳥が綺麗に種だけにしてくれる。
1年後に妻になる女性とサクランボのコンポートを作るということで青のルクルーッゼ(ココット・オパール)を買った(新潟のデパートでお金が足りなくて妻に借りて買った)。魚をまるごと入れるように、この形だそうだ。大きめの鯛を塩窯焼き(卵白と塩を混ぜ、魚全体にかぶせ、蓋をしてオーブンで焼く)にしたことがある。オーブンにちょうど入る大きさである。
黄色(ココット・ロンド)はカレーを作るときにちょうどいい大きさだ。下の赤いハートにヒレがついたようなプレート(プレート・ダムール チェリーレッド)はミーソースにチーズを乗せて焼くといい。蓋も一緒に買いたかったなあ。既に廃盤のようだ。時折ネットで見かけるが一緒に買わなかったことを思い出にしておくことにしている。オレンジの蓋つきは陶器と知らず、安いと思い買ったのだがなんか騙されたような気がした。それなりに重宝ではあるが。
サクランボをとって父母と四人で砂糖で煮込んだ。確か最初の顔合わせだった。コンポートももさほど甘くはなかった。
もうその木も、あの女子校も移転して普通高校になった。グランドの跡地には介護施設が建っている。あの頃の高校生ももういい歳だろうなあ。サクランボのことを覚えているだろうか。