「COVERS」(13)フィスラー

フェースブックにはカバー写真を設定することが出来る。皆それぞれに気に入った写真をアップロードしてコメントを書く。僕は厨房仕事に欠かせない道具をカバーすることにした。COVERSというのは僕の大好きな音楽家のCDだ。有名な曲の「替え歌」が演奏されている。料理のレシピというのは大昔から家庭でそれぞれに奏でられている音楽のように思う。誰かに習い、毎日奏でる。皆同じ様に見えながら二つとして同じものはない。私達一人一人が違うように。「商品化された食事」は自分らしさを殺す。自分らしく生きるために僕は今日も道具たちと厨房に立ち、料理を作る。このシリーズはこちら


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圧力鍋を買いたいという友人にはとにかく「値段の高いもの」を買うといいという。

もう一つ、「魔法の鍋ではない」ともいう。

とにかく使い終わった後の洗いと片付けがめんどくさい。
使っている間にパッキンは劣化するし、火加減を間違えると焦がしてしまう。
まあ、面倒な器具では無いが、圧力鍋一つで全ての問題を魔法のように解決するわけでは無い。人生に問題は尽きない。いくつ買っても無駄である。


3年浪人して合格した大学の入学祝いに「魔法の圧力鍋(笑)」を買ってもらった。
国産のアルミ合金だったような気がする。
まだ珍しかった。カレーを煮たらジャガイモが完全に溶けてしまったことを思い出す。


母はイワシを骨まで食べたいと言って買った。国産のものすごく安いものだった。骨まで食べれるけど、加熱が過ぎると文句を言ったものだ。
生姜をたくさん一緒に入れていつも煮ていた。

しかし、ビスの止めところの細工がヤワでぐらついた。2-3回くらい買い直したと思う。母は「安物買いの銭失い」と言いながら「いつ死ぬかわからないから安いのでいい」といって同じものを買った。やがて料理をすっかり作れなくなっていった。鍋の方が長生きした。


写真の圧力鍋はフィスラー(ドイツ産)で実に使い勝手がいい。結婚した時に買ったから20年を超えた。
一回だけパッキンを変えた。内容物を外に出す時に鍋のふちに引っかからない。20代の頃使っていたのは落としぶた型(蓋が楕円で圧力がかかっていると開かない)の鍋だったが内容物を鍋から出すに困った。
奥はフィスラーのウオームポット新婚旅行で泊まったローマのホテルでミルクとコーヒーをレストランの人がサービスするのに使っていた。ずいぶんヤカンとして使っていたが、温水器にその座を取られた。取手と本体が溶接されているが、取っ手は熱くならない。ステンレスの溶接は手間がかかるはずなのだが実に見事だ。