『幸運な病のスタディ』(18) 何を食べれば良いのか(1)「商品化された食事」が生活習慣病を生む

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1−17までのスタディは「病気・医療・身体」とは何かを考えてきました。
ここからは、「食事の価値」を考えるシリーズになります。


1959-1960年にかけて、アメリカのマクガバン上院議員は食事と健康に関するレポートを作成しました。
このレポートの中で、アメリカ人の健康の悪化は「脂質」が多すぎるからだと論じました。

そして理想的な食事は「炭水化物ー脂質ータンパク質」の比率が「6:2:2」の日本食だと打ち出すのです。


このレポートの影響は大きく、今でも「日本食はヘルシー」だ「食の欧米化が不健康の元」だと繰り返されます。
欧米においても戦前は見られなかった健康に対しての問題でした。

そしてこのレポートが日本人の分析を行った部分は誤った一次資料をもとにしていると僕は考えています。
父の幼い頃の話などを聞くといかに多彩な食材を周辺の環境から得ていたのかがわかります。

栄養学の専門家の皆さんには「マクガバンレポートの信頼性」を改めて分析していただきたいと思います(笑)。


しかし、その食事ポリシーはいい結果を生みませんでした。
結局アメリカでの健康問題は解決することはなく、見直しを余儀なくされます。
徐々に炭水化物の比率が下がっていきますが、成人病ー>生活習慣病と名前を変えながら『医学に直せない災厄』は大きくなていきます。


1980年ぐらいまでは皿の上の「炭水化物ー脂質ータンパク質」しか見ることは出来ませんでした。
しかし、その後の「生化学」の進歩は身体の中で「代謝」された後での構成比率を明らかにしています。
炭水化物が代謝されて脂質に変わることも明白になっていきます。

身体の構成比率とに近い食事こそが『医学に直せない災厄』から自由にしてくれるのです。



炭水化物は「毒」ではありません。
問題は、炭水化物が美味しすぎることなのです。
そして加工に手間がかかりません。

「商品」としてはパーフェクトなのです。

そこに問題がります。

「炭水化物と言う嗜好品」を除いて、「素材から食事を作る」ということは大変な「手間とコスト」がかかります。



今という時代は過酷です。

みんな生きるのに精一杯で、食事にコストをかけてはいれません。
しかし、忙しくてお金がないからと言って、「生活習慣病」になっても仕方がないと言えるでしょうか?

誰にでも効く万能の薬もサプリメントもありません。

「自分という細胞のコロニー」に必要なものは美味しさという尺度からしか測れません。


マクガバン報告に関しては意外なほど文献が少ない。一番詳しいのはこの本かもしれない。

マクガバン報告は「100年近く前の食事に対しての考え方」を知る「歴史的資料」でしかない。

しかし、「今の私達の食事に対しての考え方」とて、同じである。
決して「真理」などではない(「真理」と言う言葉は考え方を硬直化させるから僕は嫌いだ)。

僕が注目したいのは、「健康情報の氾濫がなぜ起こったのか」という原因の分析である。

おそらく、「家庭のシェルターとしての役割の喪失」と結びつけて論じなければならない。しかし、それは困難である。


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