インシュリンは血糖値を下げると言う表現は止めたほうが良い(2) 60兆個の細胞のコミュニケーション

生物は大変な情報処理を行っている。

食事などに由来するブドウ糖の濃度が高くなっていくと、膵臓(スイゾウ)はインシュリンを放出する。
インシュリンは、60兆の細胞に対しての「ブドウ糖を細胞内に取り込んでもいい」という指示(許可)なのである。

インシュリンが血糖値を下げるという現象は昔から知られていたが、どういう仕組で下げるのかは2011年のGULIT4の振る舞いの発見からである。まだその意味はハッキリと示されていない。



指示(許可)を受けなければ「筋肉細胞と脂肪細胞」は内部にブドウ糖を取り込むことが出来ない。
これは、ブドウ糖が少ない環境で進化してきた生命の知恵なのである。



逆に言えば、指示(許可)がなくとも取り込むことが出来る組織もある。
生命にとっての重要度の順位によってブドウ糖の使われ方の順位が決まっている。

インシュリン 順位 臓器 機能
不要 1 随時
不要 2 赤血球 酸素運搬
不要 2 肝臓 ブドウ糖製造(糖新生
不要 2 腎臓 老廃物排出
不要 3 筋肉細胞 緊急(運動)時
必要 4 脂肪細胞 無制限に取り込んで脂質として保存
必要 5 筋肉細胞 細胞内でのグリコーゲン補充(自己使用分のみ)

そして、筋肉細胞には巧妙な仕掛けがある。
筋肉細胞が「インシュリン」の指示がなくともブドウ糖を取り込めるという分岐である。捕食とか逃避といった緊急事態には筋肉は運動して、エネルギーが使用されだすと、インシュリンがなくとも勝手にブドウとを取り込み始めるのである。
爆発的な活動(=ブドウ糖)が必要になるのである。





インシュリンとは、優先的に、「脳」「肝臓」「腎臓」「血液(赤血球)」「筋肉細胞(運動時)」にエネルギーを使わせる仕組みなのである。
見方を変えれば、「「脂肪細胞」にブドウ糖を取り込んで蓄積しろ」と言う命令を出しているのである。




インシュリンの機能の流れは以下のとおりでsる。

インシュリンは「ホルモン」で「タンパク質系」である。
タンパク質は細胞膜を通過できない。


細胞内に外に「ブドウ糖」が存在するということを伝える役割が必要である。
細胞膜の表面にあって、血液内のインシュリンと結びついて知らせる役割をする存在である。


これを受容体という。
細胞膜(脂質の膜)の中に埋め込まれたタンパク質の島である。
受容体が反応すると、細胞内では、トランスポーターと言われる細胞外から目的場所まで物質を運ぶ風船のようなコンテナが移動して、ブドウ糖を運搬する。

どこに運搬するかというと、それぞれの細胞が300-500持ているミトコンドリアと言う組織である。
ミトコンドリアブドウ糖と酸素を利用して、ミトコンドリアはエネルギー(ATP)を生産する。
そのエネルギー(ATP)は、それぞれの細胞の機能に従って使用され、相互のコミュニケーションは続く。




なぜブドウ糖は、これほど厳重に管理されるのか?
ブドウ糖は、劇薬なのである。
ブドウ糖はタンパク質といとも簡単に結びついて正常に機能させなくなるのである。
この糖化と呼ばれる現象が積み重なり、不可逆な変化となっていく。

それが老化なのである。





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ちなみに、ホルモンにはもう一種類あり、ステロイド系のホルモンと言い。「脂溶性」であり、細胞膜を通過することが出来る。そして、目標に情報を伝える。


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