絶望を表現する人たち(1)「生活賃金」、「ベーシックインカム」「少子化」私達の経済活動と奴隷制は切り離せないものなのだということを理解するべきだ。

「生活賃金」とか「ベーシックインカム」という考え方がある。何もしなくとも一定額のお金をすべての人に配布するというものだ。
いずれも、ある種類の仕事は「時給」で計算すると(ある程度の生活水準の)生活ができないから考えられた。
生活保護の拡張版である。移民政策などとも一体化して考えるべきなのだろう。
 
しかし、考えてみれば、「生活費」は他の人の収益の元なのだ。
「地代家賃=地主の収益の元」「税金=役人の給料の元」「医療費・医療保険=医者や医薬品メーカーの収入の元」通信費=携帯メーカーやキャリアの収益の元」
そして年金や介護保険は施設を建てて運用している土建屋の収益源だ。
市民が従順な消費者になってもらわねば社会自身が維持できないのだ。物は溢れても、買えないならばどうにもならない。
 
私達は給料をもらうがそれは様々な「商品(通貨に換算される)としてのサービスや物を通じて」私達の生活を通過していく。
そして商品である以上、「製造費と利益」から構成される。大量に売れれば売れるほど利益は大きくなる。
「経済生態系」の中で利益は一番上に集約される。それ以外のプレイヤーを通貨は通過するだけなのだ。
 
賃金が安い所で物を作りそれを高く売れる所で売る。グローバリズムという奴隷制である。しかし、サービス業はここにいなければならない。
そして(ある程度の生活水準の)生活を求めながら、ができない人間が多ければ多いほど賃金は安くなり移民という奴隷に依存する。
彼らの自国では社会インフラもなく、通貨の価値の差があるのでここで何年か我慢して送金して生活が出来るのだ。
まさに「おしん」の時代の東北と関東の関係である。
 
私達の経済活動と奴隷制は切り離せないものなのだということを理解するべきだ。
その上でどう生きるべきか考えねばならない。政権が交代すしようとも、社会変革が起こった所で同じことが繰り返される。
 
カート・ボネガットさんは『「奴隷」が社会の制度』だった時代(フルタイム・スレイブ)に奴隷所有者の自殺者の高かったと書いている。
何故かいつもそれが引掛かる。

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資本主義が生き残るための処方箋──生活賃金かベーシックインカム
2019年02月27日(水)12時20分
[ロンドン発]「私たちの首都で働く5人に1人が生活していける賃金をもらっていません。みんなで協力してこの問題を解決していきましょう」――。

世界屈指の金融都市「シティー・オブ・ロンドン・コーポレーション」が英民間団体「生活賃金財団」の後援で、労働者が最低限の生活を維持するために必要な生計費から算定した賃金である「生活賃金」の導入を呼びかけるキャンペーンを始めた。
「シティーの100社以上がロンドンの生活賃金を払うことに同意しています。しかし、もっと多くの会社が参加できると思っています」

2週間にわたってリバプール・ストリート駅、ユーストン駅、ビクトリア駅、パディントン駅を含むロンドンの主要9駅に大型ポスターを掲げる一方、ソーシャルメディアや新聞広告を通じて運動を広げるという。

「1マイル(1.6キロメートル)四方」と呼ばれる金融街ティーには金融機関や法律事務所、国際コンサルティング会社など9490社がひしめき、27万3000人が働いている。

学生の就職先としても人気
同財団の調査では、93%の大学生が生活賃金を導入している会社で働くことを望んでおり、生活賃金を導入している企業の86%がビジネス上の評価が上がったと答えた。

ティーにある保険会社アビバは2006年から生活賃金を導入。不動産・施設部長のスチュアート・ライト氏は「これは単にお金の問題にとどまらず、労働者に誇りを与えます。採用にもプラスになります」と語る。

「シティー・オブ・ロンドン・コーポレーション」の行政責任者キャサリン・マクギネス氏もこう話す。
「生活賃金を支給することはビジネスにとっても私たちの社会にとっても良いことです。もっと大切なのは労働者とその家族の生活の質を向上させるということです」

これがロンドンの「春闘」と言うべきか。

グローバリゼーションとデジタイゼーションの波は先進国の非熟練労働者をのみ込んだ。産業構造の転換が加速し、賃金が生計費の下限を超えて押し下げられた。

ロンドンでも1日に別の職場で2度働かなければ生活できない「ダブルワーク」の低賃金労働者が続出した。「子供と過ごす時間を返して」と2001年以降、雇用主に生活賃金の導入を求める運動が広がった。

同財団は昨年11月、18歳以上の実質生活賃金を時給9ポンド(約1313円)に、ロンドンの生活賃金を10.55ポンド(約1539円)に引き上げると発表。同財団の生活賃金を自主的に導入する雇用主は英国全体で4700社、ロンドンで1500社以上にのぼる。
一方、同財団の生活賃金とは別に、英国政府は最低賃金制度の一環として2016年、法定の「全国生活賃金」を導入している。

現在、25歳以上の生活賃金は時給7.83ポンド(約1141円)、21~24歳に適用される最低賃金は7.38ポンド(約1076円)とされている。最大野党・労働党が主張する生活賃金は10ポンド(約1458円)だ。

生活賃金を下回る労働者はパートタイム310万人、フルタイム240万人。職種別では販売・小売店補助、レストランやケータリングの補助、清掃や家事、介護・在宅サービスとサービス業が圧倒的に多い。

フィンランドでは2017年1月から2年間にわたって既存の基礎失業給付や労働市場補助金を停止する代わりに月額560ユーロ(約7万470円)のベーシックインカムを支給する実験が行われた。

ベーシックインカムとは最低限度の生活を保障するため国民全員に同額の現金を配る制度だ。

2年間のうち1年目の調査結果では、参加者の就労状況はほとんど変わらなかったが、自分で感じる健康状態やストレス度は他のグループよりも改善された。

日本でも自民党の有志議員が「最低賃金一元化推進議員連盟」を設立し、全国一律の最低賃金を目指す。最低賃金は最も高い東京都で985円、鹿児島県で761円と224円の開きがある。都市と地方との賃金格差を解消するのが狙いだ。

最低限の生活を保障するために働くべきか、働かざるべきかと問われたら、やはり働いて十分な賃金を稼げた方が良いに決っている。資本主義が生き残るためには所得配分と富の再分配機能を復活させるしかない。

筆者はベーシックインカムより生活賃金を支持したい。

生活賃金財団のキャンペーン責任者ローラ・マカボイさんは「多くの金融機関はいまだに警備や清掃の従事者に生活していける賃金を支払っていません。今回のキャンペーンがシティーの雇用主に生活賃金導入を促すと信じています」と力を込めた。