インスリンのアミノ酸組成 インスリン抵抗性とはなにか アミノ酸は(ビタミンのように)特定の機能を持った生化学物質ではない。タンパク質という精密機械を構成する部品なのである。
このエントリーはタンパク質のスタディの一環です。こちらも見てね。
インスリンは、膵臓のβ細胞で作られるホルモン(タンパク質)である。
一番最初にアミノ酸配列が特定されたタンパク質である。
1950年台にサンガーさんがアミノ酸配列を特定した。
ちなみにに、サンガーさんはこれでノーベル賞をもらっている。
食事によって、ブドウ糖の濃度上昇によってインスリンが分泌する(追加分泌という)。
細胞の外をブドウ糖とインスリンが同時に流れる。
細胞膜上にあるインスリン受容体(これもタンパク質)がインスリンに反応して、細胞内にシグナルが発生する。
そのシグナルによって細胞内の「Glt4=グルコーストランスポーターNo4」は細胞膜まで上がってくる。
細胞の外を流れているブドウ糖を細胞内に取り込んでいく。
もし、このアミノ酸の配列が適切でないならばどうなるのだ?(受容体とホルモンの双方に起こりうる)
工場では「歩留まり率(不良品の比率)」を下げるのが大きな課題になる。
では、細胞の工場ではどうやって歩留まりを落としているのだろうか?
果たして、どのくらいの歩留まりなのだろうか?
「DNAドグマ」のその先の話である。
そんな研究は見たこともない(笑)。
ちなみに(1)、牛と豚のインスリンは人のインスリンと少し違うが人には同じように効果がある。
1922年にインスリンが薬として認可された後1980年代までは豚のインスリンが多くのI型の患者の命をすくってきた。
1980年以降は大腸菌の遺伝子組み換えで人工的に(人のインスリンと同じアミノ酸組成のインスリンが)作ることが可能となる。そして1982年日本でのインスリン自己注射が公的に許可されるのである(ちょっと憂鬱な話である)。現在インスリンのメーカーは世界に3社(サノフィ、イーライリリー、ノボ ノルディスク)だったが、参入が続いている。
ちなみに(2)薬剤としてのインスリンではアミノ酸組成の数カ所を変更することで注射後効果が出るまでの時間を調整する。脂肪組織に注射されて、分解されながら体内に循環するので食事前30分とかに注射しなければならない。もし、注射したインスリンが効果を発揮した時に予定の通りの炭水化物を取らないと低血糖になる。
ちなみに(3)人の膵臓では、食事をして、ブドウ糖が取り込まれるとその瞬間にその食事量に対応したインスリンが即座に分泌される。インスリンの体内での効果時間は5分なのでブドウ糖が細胞(脂肪と筋肉)に取り込まれると同時にインスリンも消える。多く出過ぎる場合もあるだろうが、注射ではほぼ2時間分(食事でブドウ等変動がある時間)のインスリンが一回の駐車で入ってくるので、微調整が難しい。そのために、インスリン治療の人はいつもブドウ糖の錠剤を持ち歩く。
ちなみに(4)アナログインスリンと言われるインスリンは一回の注射で一日効果がある。これを基礎分泌という。僕の場合は、基礎分泌に相当する分泌はまだあるので血糖値が下がる。しかし、追加分泌(食事で上昇する分)に対応するインスリンの分泌がないために、蕎麦一杯で200mg/dlを超え、カレー食って300mg/dlになる(1,2)。
ここが詳しいサイトです。
51種類のアミノ酸からインスリンは構成される。赤い丸が必須アミノ酸。A鎖とB鎖は細胞内では7-7と20-19のCysでつながっている。Cペプチドと言う部分(ここには書いない)が放出される際に切り離されることで活性化する。
牛、豚、ヒトではアミノ酸配列は3箇所(豚とは1箇所)しか違わない。つまり、細胞レベルでは「牛、豚、ヒト」は兄弟のようなものである。食事で、タンパク質を分解するのは、豚の膵臓食べて低血糖にならないようになのだ(笑)。
薬剤として使われるインスリンは何箇所かのアミノ酸が置き換えられている。DNA組み換えが医薬品と言う出口を持った事例である。しかし、特効薬は医療の本質を見誤らせる(1,2)。
A鎖
1 Gly グリシン 2 Ile イソロイシン ◯ 3 Val バリン ◯ 4 Glu グルタミン酸 5 Gln グルタミン 6 Cys システイン 7 Cys システイン 8 Thr スレオニン ◯ 牛では Ale 9 Ser セリン 10 Ile イソロイシン ◯ 牛では Val 11 Cys システイン 12 Ser セリン 13 Leu ロイシン ◯ 14 Tyr チロシン 15 Gln グルタミン 16 Leu ロイシン ◯ 17 Glu グルタミン酸 18 Asn アスパラギン 19 Tyr チロシン 20 Cys システイン 21 Asn アスパラギン
B鎖
1 Phe フェニルアラニン ◯ 2 Val バリン ◯ 3 Asn アスパラギン ●即効性インスリンではここが違う 4 Gln グルタミン 5 His ヒスチジン ◯ 6 Leu ロイシン ◯ 7 Cys システイン 8 Gly グリシン 9 Ser セリン 10 His ヒスチジン ◯ 11 Leu ロイシン ◯ 12 Val バリン ◯ 13 Glu グルタミン酸 14 Ala アラニン 15 Leu ロイシン ◯ 16 Tyr チロシン 17 Leu ロイシン ◯ 18 Val バリン ◯ 19 Cys システイン 20 Gly グリシン 21 Glu グルタミン酸 22 Arg アルギニン 23 Gly グリシン 24 Phe フェニルアラニン ◯ 25 Phe フェニルアラニン ◯ 26 Tyr チロシン 27 Thr スレオニン ◯ 28 Pro プロリン ●即効性インスリンではここが違う 29 Lys リジン ◯ ●即効性インスリンではここが違う 30 Thr スレオニン ◯ 牛と豚では Ale
昨今のタンパク質ブームは、あたかもビタミン欠乏症の等に、アミノ酸が不足することで生活習慣病が起こるかのごとく「煽る」。
これは間違えである。
アミノ酸は機械の部品でしかない。部品だけで何らかの機能は果たさない。
問題は、その部品がない時にどうなるかである。
精密機械(タンパク質)を組み立てている時に「ネジ」や「ビス」がないときには、似たもので代用する?
それもないときは作ることが出来ない?
それとも、似た機能の他のタンパク質が作られる?
ノックアウトマウス(DNAの一部を壊したマウス)を育てた時、思ったような欠損症が起きないという事例が報告されている。DNAがないのだから、特定のタンパク質の欠損症が出て、それによってそのタンパク質の機能を特定しようと言う実験である。そんな目にあいながら、マウスは生きる道を見つけるのだ。
自然は狡猾で、しぶとい。
幾重にもフェールセーフが張り巡らされている。
武村政春先生の本が一番詳しいけど、歩留まり率には触れていない。間違えてコピーされた時のフェールセーフの話とか色々と面白い。勉強になる。アミノ酸がない場合の解決策が知りたい。ちなみに、tRNAはあっという間に分解されるので、その瞬間に手近なところに材料がないとどうなるのだろうか。昔の活版職人が活字を口に咥えながら字を拾っていたのを思い出す。
僕の考えでは、タンパク質の製造過程での問題が全体に響いてくるのである。とは言っても、個々の細胞にとっては全体は存在しない。これは解き難いパラドックスである。
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この本の「正確さ」と「いい加減さ」というのは良いなあ。何と言っても結果オーライである。
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森和俊先生の本は勉強になる。実に分かりやすいが、最初買って読んだときは訳がわからなかった。
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後はオートファジーやエピジェネティクの問題であろうなあ。
しかし、生命を解き明かしたとは到底いい難い。
考えさせられる。
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