幸運な病のレシピ( 172 ) 夜:変わり餃子(小滝橋風 : サイドオープンタイプ)
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もう20年以上前になる。
新宿の小滝橋の周辺で、餃子を食べたのである。餃子のサイドが閉じられていないのである。
パリパリの羽根があって、旨味がそこに入り込んでいた。
出来たばかりの質素な店内は、お店を始めたばかりの活気があった。
厨房からは、異国の言葉が時々漏れ聞こえる。
遠い国に住む父母に習い慣れ親しんだ味なのだろう。
実にローカルな味わいのある餃子であった。
31:00 5個だけ焼き始め
38:00 焼き上がり
残りは食べる直前に焼いた。
時折、具を作り過ぎて、皮が足りなくなった時は、サイドを閉じないで、あの時の餃子を狙う。
今回は、野菜を絞らないとどうなるかためしてみた。
最後に返して野菜からの汁を羽根に吸わせてみようと思ったのである。
成功した。(もっと絞ったほうが、餃子としては味がいいかもしれない。)
時折、そんな時に出会っては心に残っている。
家族という装置が受け継いだ味である。
ラングという大きな川の流れはパロールという「せせらぎ」の集まりであり、それは何時しか大きな海に注ぎ込む。そんなことを思う。
あの味を伝えた彼の父母を時に思う。
僕の餃子を子どもたちは覚えているだろうか?そんなことを思う。
その海は、いつの時代においても、荒れくるい、凪ぐことをしらない……。
「カムイ伝 まえがき」より
その海は私達の内側にある「マイクロバイオームの海」である。
あのお店はなんという名前で、この餃子はなんというものなんだろうか?
果たして僕の記憶の中のあの味は本当にああだったのだろうか?
いつも思う、一度きりの出会いだった。
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