エビデンスと言う幻想(1) プラシーボ効果ってなんだろうか?、統計は世界を「意味あるもの」に写すだろうか。

ここ数年でEBMと言う考え方が一気に力を持ってきたと思っている。
確かに高齢の医者が世迷言を話すのを、若い医者が黙らせるには良い。しかし、それ以外の使われ方をする。
EBM:Evidence-Based Medicine 「科学的根拠に基づく医療」と訳される。

医療行為を行う場合に、根拠を明確にすることが要求されるのである。
根拠が明確な医療行為の結果、患者が死んでもそれは医者の責任ではないということである
(違法性が阻却されるのはあくまで適切な医療行為の場合だけである)。

たしかにそうである。

しかし、この「科学的根拠」と言うやつに関して僕には違和感がある。
なので、このシリーズでは、EBMを批判的に捉えていきたい。



プラシーボ効果」というのは、本来効果がない薬を飲んでも効果が出る場合のことをいう。
本来直す力のない薬を飲んだだけなのに、直った。
『人の心のパワーが病気を直した=人の心って凄いなあ』と言う仮説である。
「薬は治さない自分自身で直すのだ」と言う結論を導きたいならば僕は良いロジックだと思う。そういう文脈で使うなら嬉しいものである(笑)。しかし多くの場合そうではない。


「試験者」に区別のつかない2種類の薬を渡す。
どのが効き目があり(本薬)、どの薬が効き目がない(偽薬)かは「試験者」には区別がつかない。
そして、無作為に抽出した「被試験者」にランダムに与えてもらう。
その上で、非試験者のグループ(本薬・偽薬)のグループの間で「効果にどのくらいの差」があるかをみて、薬の効き目を判断する。

この差がその薬の効果であり、実験や統計上の処理が「効果のエビデンス」である。




こんなことを考えてみよう。

ある工場で生産された自動車をランダムに選択する。
運転手に「白い粉」を渡して、ガソリンタンクに入れさせる。
片方は砂糖で必ずエンジンを焼き付かせる。
片方は全くエンジンには無害な粉である。
走行試験をしてどのくらいで焼き付くかを見て、エンジンに砂糖を入れてはいけないことが分かる。

こんな実験はする必要はない。
なぜならば、自動車のエンジンに砂糖を入れれば焼き付くのは当たり前だからだ。

工場の生産物が特定の割合で不具合が出るとしよう。
その場合にはランダムに抽出して何らかの統計処理なり実験をするのは良いだろう。
どの自動屋も同じ様に出来上がるはずなのだから....... 。
そして出来上がらない理由を調べるのにこの技法は重要である。

「青酸カリ」と「無害な粉」を飲ませて死ぬかどうかと言うテストをランダムに抽出して、飲ませればどれが偽薬かは分かるだろう。
飲んだ途端に死ぬから、まず間違いないだろう。


しかし、長期間に渡るテストの場合は、「その粉」以外のものも食べているし、みんな違ったところで違った生活をしている。
そんなテストになにか意味があるのだろうか?





人は工場で作られた自動車ではない。
あまりに違いが大きすぎるから、ランダムに大量の調査群を選択してもそもそも意味がない。
「ブドウ」と「ジャガイモ」と「サメ」と「ペンギン」と「鳥の糞」のどれが一番早く走るかなどという調査には意味がない。まさにモンティ・パイソン的である(笑)。


同じ規格で作られていて、不良品を仕分けるためにテストするのではない。





ある大学で「生活習慣病がこの10年で増えているかどうかの調査」が行われた。
数百人をランダムに抽出して10年前に比べて体重の増加をアンケートしたそうである。
結論は「増えている人は少ない」と言う結論であった。
そこで大いに喜んで、「生活習慣病は増えていない=私達の生活指導は効果がある」そうだ。

20歳から90歳までの年齢の人をランダムに抽出して10年前に比べで体重が増えたかを聞いて何の意味があるだろうか?

新聞の広告を見るといい、生活習慣病を恐れている人(今苦しんでいる人)向けの薬の広告満載である。


昨今のTVはこのエビデンスというやつの真似をする「実験型」の番組も多い。
5人の人が、1週間玉ねぎを食べたら、血液がサラサラになったなどという実験を見ると、大笑いである。
その5人は他のもの食っていないのか?
そもそも、血液サラサラって何だ?
検査値なのか、アルブミンの濃度か?
なんか使いまわしたような「血液が流れている動画」ちらっと見せられてもなあ。

本当にその人の動画なのか(笑)?


かく言う僕もEBMには長く騙されていた。
効果が多くの人に見られ、副作用がの発生確率が低ければ安心して服用するのは間違いである。

自分にとって意味(効果)があるかないかが重要である。
たとえ100万人に副作用がなく、効果があっても、自分に害があったら100%の確率なのだ。

僕の娘は「インフルエンザの薬」で死にかけた


糖尿病においても、なかなかひどいEBMがある。

例えば、海外の論文で「SGLT2阻害薬」にはガンを抑制すると言うデータ解析の論文の紹介を読んだことがある。握力が向上した追撃エビデンスもあるそうだ。

憂鬱になる。発売後、あっという間に副作用で10人死んだ薬である。
医者はどんな顔して、「この薬は血糖値下げるし、握力が上がります、ガンも抑制するエビデンスがあるから飲みましょう」て患者に言うのかねえ。エビデンスというのは便利な幻想である。問題はどう使うかである。
ついでに、グリコのおまけも付けたらどうだ。


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ちなみにグリコって語源はグリコーゲン(ブドウ糖)なんだよね、それを知ったときにはなんかニンマリしたなあ。