西岸良平の故郷 僕にとってのlocalの物語

夕焼けの詩『三丁目の夕日』と言う物語が有る。

連載開始当時、僕は東京で浪人生活を始めていた。
ビッッグコミックスでは「ゴルゴ13」オリジナルでは「アブサン」「三丁目の夕日」が連載されていた。
時々駅のゴミ箱から拾って読んでいたものだ。

三丁目の夕日の作者の西岸良平さんの作品は大好きだ。

独特の文体(絵やストーリの流れ)で、ヒトの想像力を理解しているその力には敬服する。
ブラッドベリーなんかの系譜を引いたSF作家と考えている。



彼の物語には何度か繰り返される主題が有る。

田舎で生まれ育った若者が、自分の未来に対して疑問を持ち都会に出て来てくる。
結局は上手く行かない
そして田舎に帰るに帰れないまま人生を送る。

で6畳一間のアパートに住むと言うものである。


しかし、彼の物語には救いが有る。


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かつて、localな世界では、その人の人生の終りまで見えていた。
仕事を世襲して、次の世代に世襲する。
仕事の内容は変わる事無く、人生は波も風もなく進む。

地元には大きな工場が有り、ご近所さんはみな同僚だったり、上司だったりする。
お祭りの民謡流しでは、会社名が入った山車と一緒に踊る。
子どもは、その会社に入り、親は引退する。

子どもは、localの誰かとセックスをして、おとなになり、上手く進めば結婚して近くに住む。
年老いた父母は近くの友人達と連絡を取りながら日々を過ごす。
枯れ葉が落ちる様に老人は死に、いつも一定の間隔で葬儀がある。
墓に入り、彼の人生は終る。
localの人々の記憶の中に彼の姿は残って行く。

自分もいつか、そこに入ることを知っている。

それが当たり前だった。





今はそうではない。
故郷に仕事などは無い。
あるとしても、その仕事は、どこか遠い所に利益が吸収される仕事のブランチでしかない。


僕の町には豆腐屋さんも肉屋さんも、八百屋さんも、魚屋さんも無くなった。
有るのは大手のスーパーと、安いパートのお仕事。
服は、ネットで買っているし、近所の映画館(もうずーっと前に潰れた...)にも行かない。
そうなった原因は僕らにもあるのだが、『市場経済』と呼ばれる利益吸収の仕組みに根本の問題がある。




僕らの物語には救いはあるのだろうか。


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