「生活習慣病の考古学」:行政用語だったんだ。

僕は「検査値の異常(症状がない、症状との因果関係が統計的なものでしか無い)」を病気ということにおかしいと思うようになった。
色々と文献を調べるが、この疑問に答えてくれるものはなかった。


先日、香川靖雄先生の「生活習慣病を防ぐ(岩波新書 2000年)」に明快な答えがあった。
生活習慣病」とは行政用語なのだ。

生活習慣病を防ぐ―健康寿命をめざして (岩波新書)

生活習慣病を防ぐ―健康寿命をめざして (岩波新書)


「本来、病気は特定の病因によって、固有の病変が生じて症状が現れ、一定の経緯をたどる」....「生活習慣が発症、進行に関与する一群の疾病を総称する行政用語なのである」
1996年に厚生大臣の諮問機関で命名された。
従来の「成人病」とほぼ同じ定義であるが、子供にもその兆しが見えているので、「成人」という言葉を外した。
一次予防の重要性を認識、そして個人の努力を喚起する目的もあった。

海外にもいくつか類例が有るという。



大変良い本であるが、「社会の変化」が病を生んでいると言う観点が抜けている。
不健康な生活習慣などというものを誰もしたいわけではない。
せざるをおえない「社会」がいつの間にか私達を取り囲んでいるのだ。

社会の変化というのは、「グローバリズム」と「地方の生活コミュニティの崩壊」に問題である。
こちらは僕の専門分野である(笑)。


そして、「食事の商品化(=ご飯を買って食べる)」ことを強いられる社会になってしまうことで、様々な問題が怒ってしまった。
大事なことは「商品化」と言っても一食に数千円かけられるような商品を買える人は大丈夫なのだ。
問題はワンコインで食事を済ませてしまう様な生活である。
「パスタにレトルト」のような(誰もが大好きな炭水化物メイン)食事が、食卓から「生命」を追い出してしまったのだ。

そういう意味では「商品化」というよりも「低コスト」の食事である。