「COVERS」(4)アカナベ(銅の鍋)

フェースブックにはカバー写真を設定することが出来る。皆それぞれに気に入った写真をアップロードしてコメントを書く。僕は厨房仕事に欠かせない道具をカバーすることにした。COVERSというのは僕の大好きな音楽家のCDだ。有名な曲の「替え歌」が演奏されている。料理のレシピというのは大昔から家庭でそれぞれに奏でられている音楽のように思う。誰かに習い、毎日奏でる。皆同じ様に見えながら二つとして同じものはない。私達一人一人が違うように。「商品化された食事」は自分らしさを殺す。自分らしく生きるために僕は今日も道具たちと厨房に立ち、料理を作る。このシリーズはこちら


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手前の鍋は大昔からある。奥のものは比較的最近のものだろう、僕が小さい頃はなかった。
銅でできている鍋で「アカナベ」と母は呼んでいた。

青い色の野菜を茹でるときはこれを使った、普通の鍋だと青い色が飛ぶがこの鍋だと飛ばないと言って特に山菜はこれで茹でたものだ。
この上の大きさのアカナベを買ったときの母の得意満面な顔は忘れられない。
蕨のアクを抜く時に使っているのを見て、真青なままにアクが抜けるのを見て驚いたことがある。

濡れたままにすると青錆が浮いて来るので注意深く乾燥させていた。年い一度しか使わない道具も多い。

というよりも、道具は使うときしか役に立たない。使い方を知らなければただの邪魔者だ。
必殺シリーズに出てくる「昼行灯(ひるあんどん)」と呼ばれる凄腕の侍ってかっこいいだろう。

気がつけば僕の家は行灯ばかりである。
夜になってもつかない行灯もある。
しかし、かつての活躍を知っている身になると捨てづらい。我が身を見るようである。


昨日、ナバナを茹でたのだが、この鍋があることに気がついた。次に茹でるときはこの鍋を使おう。