『幸運な病のスタディ』(16) DNAは生命(細胞)のプロトコル 細胞の栄養学(6)

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「設計図」と「プロトコル」の関係は、このお話で詳しく触れています。

全体を記述するのが「設計図」で、「プロトコル」は個々の細胞の振る舞いを定義しています。
豚のインスリンがヒトの細胞にも効くのはなぜでしょうか?
細胞(生命)は「種」などという分類を持ちません。
DNAは生命が共通のルールで生きていることを記述しているのです。


栄養学の教科書などには「ヒトは知恵があるので食物連鎖の最上位に立っている」などと書かれている本もあります。
食物連鎖は「神への長い階段」かのごとく考えているのです。

DNAが全体の設計図だという考え方は「生命の形の絶対的な正しさ」が存在すると感じさせます。


生命とは単なる細胞のコロニーでしか過ぎません。
ヒトとは70兆の私細胞(精子卵子に由来するDNAを持っている細胞)と数知れないマイクロバイオームが共に生きているコロニーなのです。

そう考えることで「健康・運動・食事」という当たり前に見えていた物が違って見えてきます。



私がいま毎日食事を作っているのは、「誰にでも効く食事」などというものはないと信じているからです。
そして、多くの人たちに、同じように感じてもらいたいと思っています。
そうすることでしか世界は変わりません。





生命のからくり (講談社現代新書)

生命のからくり (講談社現代新書)

中屋敷先生の著作は大変参考になりました。
生命科学においては「擬人化」を排除しなければならないと言う考えは素晴らしい。
わかりやすさと、ミスリードは注意しなければならない大きな問題です。

生命科学においては、「ヒト」を単なるコロニーとしてみることが重要であると思うのですが、観察者は自分自身の経験があるために見えないものが多いのです。文化人類学では大きな問題として議論されてきました。





コンピュータの世界を考えてみるとよくわかります。
私はネットワーク技術者なので、このプロトコルと言う仕組みと毎日格闘しています(笑)。

毎日ネットは大きくなっていきます。
昔のOSもあるし、新しいデバイスは毎日追加されています。

コンピュータは新しくなるたびに、前のOSに「新たなプロトコルが」追加されていきます。
大腸菌のDNAにあるタンパク質の定義は4500個、そして私達のDNAは45000個しか定義されていません。
しかしDNA鎖の長さは比較にならないほど長いのです。
DNAの大半は、どの様にコード化されている「タンパク質と言う部品」を使うのかと言うマニュアルです。そしてそのマニュアルは生命のプロトコルに従っています。


全体の設計図がないからこそネットは大きく広がり、あらゆる環境に対応できていくのです。





新しいプロトコルを追加する場合「rfc(Request for Comments)」と言う手順で行われます。ウイルスがホストを傷つける時かのように見える「病」を考えると大変興味深いアナロジーを感じます。

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そして、私達は意識を持ち、「喜びや悲しみ」を持っています。
「生まれ、生きて死を迎えること」の意味、はまた別の機会に.....。


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