『幸運な病のスタディ』(11) 脂肪は燃焼しない 細胞の栄養学(1)
「まとめ・趣旨」はこちら。このシリーズはこちら。再生リストはこちら。
「脂肪が運動で燃焼する」という考え方は間違えている。燃焼とは、酸素と水素・炭素が高温で反応して、熱を放出することなのだ。
100年以上前に無機物から有機物が合成されるということに気がついた科学者が体内で燃焼と同じ反応が起こっていると思ったのである。
それがカロリー栄養学の始まりである。
当時は「神」と言う仮説を否定する代案が必要だったのだ。 体温がどこから来るのかを科学的に説明するための仮説であった。
しかし、今ではその仮説が間違えであることは明白である。
そして最大の問題は、政治的に正しい栄養学を必要としている行政は「カロリー栄養学」を手放すことが出来ない(注1)。
食物を乾燥させて火をつけたら、どのくらい温度を上げるかを図ったものがカロリーである。
身体の中では、燃焼は起こっていないというのに、燃焼した時の温度を上げる力を単位としたのである(注2)。
「分子生物学・生化学」と呼ばれる学問は今までの考え方を覆す生命の見方を教えてくれる。
精子はミトコンドリアを持っていました。受精後にオートファジーで消されていました。詳しくはこちら。
この一週間、「食事と排泄」の度に体重を計った。
変動をグラフにした、昼間は均衡する、そして夜、大きく減っていく(その分おしっこが出る)。
昼運動している間に痩せるわけではないのだ。この回もご覧ください。ここも詳しく書いてあります。
寝ている間に小便に起きてその度に減っていっている。
カロリー栄養学は、僕の体で起こっていることを医学は何も説明してくれない。
2015年からの厨房修行で僕は自分の体に最適化された食事を見つけることができたと思っている。
しかし、痩せられなかっら。
原因は酒だった。失明すると宣告され、なんとか生きられるのではないかと思った矢先に母が亡くなり、親戚縁者には裏切られた。そんな中で僕は現実と戦った。
そして酒を止められなかった。
何度も禁酒には挑戦した。
そしてついに2018年5月20日から、1ヶ月以上酒を飲んでいない。
これだけ長く飲んでいないのは初めてである。なぜ飲まなくなったのかはうまく表現できない。
しかし、決して勝利したなどとは思っていない。
僕は依存症なんだ。糖尿病と同じ様に、一生解放されることはない。
毎日、繰り返される長い約束なんだ。
そして、多くの人は「炭水化物」の依存症である。
無論僕も「炭水化物依存症」である。そして、なんとかしようと思い始めている。
もう一つの問題は、果たして僕の食事探しの道は正しいのだろうかということだった。
権威(医師や栄養士や研究者・医薬品メーカー)のいうこととは全く違う食事の組み立てだったからである。
そこで、生化学のスタディが始まった。
この三年で買った本のうち最も多い分野は「生化学・代謝学」「タンパク質関係」であった。
タンパク質関係は、薬(95%はタンパク質のブロッカー)に関する開発研究であるので文献が多い。
細胞のレベルで何が起こっているのかを学ぶことで自分の食事探しが間違えていないことを確信したかったのである。
3年、「生化学の勉強」を続けるうちに「カロリー栄養学の欺瞞」「権威の嘘」を見抜ける様になった。
無論、僕の読んだ本とて、絶対的な真実ではない。しかし、僕の体に起こっていることを破綻なく説明できる。その範囲では真実である。そして未来を予測して現実に向き合っていくことができる。
ミトコンドリアはすべての真核生物(目に見えるサイズの生命)の細胞に存在する。
一つの細胞に300−1000以上存在する(赤血球は除く)。
生命は、生きるために、細胞の中では常にエネルギーが必要である。
植物においては太陽の下で得たエネルギー(=炭水化物)を「根や種」に渡すためのコンテナとして使われる。
そして、全ての動物は、植物の作り出す有機化合物を再構築してつかの間の時を紡ぎ出すのだ。
この写真は牛のミトコンドリアの内膜に存在するATP生成酵素の写真である(注3)。
「ATPアーゼ、ATP生成酵素」もミトコンドリアと同じ様に、生命共通の仕組みである。
動物は、ミクロの生命がその炭水化物を分解して「脂質とタンパク質」に再構築したエネルギーをもう一度分解して、ミトコンドリアでエネルギーとして利用するのだ。
ATP合成酵素もATPアーゼもタンパク質で構成されている精密機械なのである。その部品であるアミノ酸の半分(9/20)は体外の生命から受け取るほかがない。不足した場合は致命的な損傷となる。
ガンがミトコンドリアの不良率が高い場合に発症するということはずいぶん前から報告されている。多くの生活習慣病は、少しずつ身体の機能が失われていくことである。
何の法則も、前触れもなく「組織や臓器を構成する細胞」が失われていく。
嗜好品が多すぎる食事は「必須栄養素」を食事から追い出してしてしまう。
精密機械を構成する部品が不良品なのである。
無理が効くというのは、壊れていく細胞より作られる細胞の数のほうが多い間である。残念ながら、年取っていくとその数は逆転する。それは緩慢な死である。
ATP<=>ADP+Piのリサイクルはカロリーとは全く違う単位でしか測れない。
その上「ブドウ糖」は優先的に使われるエネルギー源なので、不足するとまずは脂肪とタンパク質を材料に作られる(糖新生)。単純に炭素と水素の数で決まるわけではない。肝臓にあるキープ分のグリコーゲンの量とも関係するので受け手の代謝傾向によって食物の意味が変わるのである。
『酸素を吸って二酸化炭素を出す」と言うふうに現象を見ていては本質が見えない。
食事は『消化・吸収〜血液循環』と言うプロセスを通じて「炭素と水素」を食物から細胞内のミトコンドリアに運ぶ。
「ADP+P=>ATPのリサイクル」のために遊離した不安定な水素をATP合成酵素は使い、水素を(内幕から)放出する。
外に出た不安定な水素と酸素を結びつけておしっこにする。
水素をここまでエスコートしてきた炭素を酸素と結びつけて二酸化炭素として体外に持ち去る。
ロマンチックである。
水素と酸素が食物というコンテナにのってミトコンドリアまで運ばれてアセチルCoAにたどりついて代謝の環を回りながら少しずつ水素は電子伝達系(内膜の中)に渡されていく。
舞踏会にエスコートされた女性が円を描いて踊りながら、パートナーを見つけ、フランス窓から消えるようである。
ミトコンドリア円舞曲(ロンド)と呼びたいが、一般的にはTCA回路と呼ばれる。
ミトコンドリアでリサイクルされたATP=>>>ADP+Piは行進曲のほうがイメージ的にはあう(笑)。
リサイクルされたATPは1秒程度の間に仕事(ポンプを回して元素や様々な物質の細胞内外の輸送をする)をしてADPになる。ATPとADPは全身(全細胞)で50g程度しかない。しかし、一日で70-80kgが使われる。平均して1500回はリサイクルされる。とんでもないことである。
酸素が供給されないと、あっという間に細胞は虚血死を迎える。
【参考文献】
ATPの研究についてはこの本が一番である。最新の動向から基本的に抑えておかなければならないことまで網羅されている。脂肪が燃焼していると思っている医師や研究者は読んだほうがいい。運動しないから太るんだなどということを言えなくなる(笑)。
生命を支えるATPエネルギー メカニズムから医療への応用まで (ブルーバックス)
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田川邦夫先生は実にいい本を出している。この3冊は3年間のスタディの方向性を決めてくれた。最初読んだときは意味がまるでわからなかったのだが、生化学の知識がついてくるに連れて分かってきて嬉しかった。『燃焼』と言う言葉を多用しているけど、酸素が反応すると言う意味である。
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技術評論社は僕の専門のコンピュータ関係の出版物が多いのだが、こんないい本も出している。代謝についての考え方が良く分かる。
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ニック・レーンさんは大好きな作家である(1,2)。結構持っている。この本は網羅的にミトコンドリアの役割を教えてくれる。
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看護師向けの本だのだが、実に素晴らしい。なにかあると何度も読みいってしまう。
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【牛のミトコンドリアの内膜】
P75からとらせていただきました。この本、大好きなのです。みんな勉強しよう。
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【カロリー栄養学はなぜ信じられているのか?】
カロリー栄養学とは『年齢と身長から割り出す必要カロリー(体重は関係しない)、3大栄養素が固定的なものであるという思い込みから導かれる食品交換(ブドウ糖が脂質に代謝されることを無視)、DNAと言う設計図から作られる「ヒト」はみんな同じであるというドグマ』この3つの組み合わせである。
なぜ、こんなに古い考え方から脱することができないのだろうと考える人も多い。
しかし考えてみてもらいたい、今日本中では「万人に正しい栄養学=カロリー栄養学」で「学校給食、病院の食事、看護施設、刑務所」など調節的な食事行政から、レストランや弁当の製造のガイドラインまで、この栄養学で運用されている。
日本全国で行政の食事を作っている120万人の栄養士をどう再教育するべきか、また、どんな考え方で食事を作ればいいのか、皆目見当がつかないのである。
誰にでも有効な食事などというものは幻想である。
ではどうしたらいいのだろうか?
まあ、そんな事はお役人様に任せておいて、僕は自分のピンコロ人生を探さねばならない。
他人様の世話にならないで人生を全うしたいものである。
【カロリーと言う単位の何が問題か?】
前提として以下の3項目があるとする。
A)1kgの脂肪のカロリーは7000kcalである。
B)一日の使用カロリーは2000kcalである。
C)そして運動でカロリーは消費される。
その結果導き出されるのは、1kgの体重を減らすには3日間絶食してやっと減るのである。
僕の体重変動はこの公式に当てはまらない。現実を説明できない仮説から今の栄養学の体系は成り立っている。
「砂上の楼閣」を絵に描いて額に入れたようである。
うん、いい絵が描けた。
この絵の続きである。
今回のためにクレパス買ったのだ。
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