ノンアルコールビールの効用(2)
父が、最近夕食に来ないことが多いので、少し気になっていた。
いろいろなことが、徐々にめんどくさくなって行くようである。
毎日一緒に食べようと思っても、なかなか時間が合わなくなっていく。
暗くなり始めても食べに来ないと食事をバスケットに入れて持っていく。
最近では、来るのが面倒になっているフシがあり、持っていくと仏間で一杯やりながらバスケットを待っている事もある(笑)。
妻は心配するが、これでいいのではないかと思う。
サルコペニアではないかとか思い、ガイドラインを調べるが、ガイドラインのほうがおかしいと確信した。(2017年版「サルコペニア診断ガイドライン」)
年をとるということは、生まれてから死ぬまでのプロセスのひとつなのだ。
歳をとった体の自然な反応である。
動かなくなるのは病気ではない。
薬盛ったり、無理に運動させたりなどということは「侵襲」でしかない。
僕はまっぴらごめんだ。そして自分にされたくないことは父にしない。
寝ている時間は長いが、フトンの中に横になって寝ていないときも多いようだ。
声を掛けると僕がいることがわかるようである。
話をすればきちんと判断した言葉が帰ってくる。
タイミングにもよるが、昔のことをキチンと覚えている。
6月5日に深夜父の家に行ったら元気に一杯やっていた。
今日も電気がついていたので、ノンアルコールビールを持っていった。
父は丁度飲み終わって寝るところだった。
僕が350mlを飲みながらなにやかにやと話している間も言葉少なく眠たそうだった。
帰る時に父は「今日もいい日だった」と言った。
その言葉を久しぶりに聞いた。
父が見ているものは何なのだろうかといつも考える。
僕もいつかたどる道なのだろうと思うと不思議な気持ちになる。
人は皆、自分の皮膚の内側で、自分の時間を生きる。
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