「人生痩せたり太ったり(仮題)」のコンセプト(5)血糖恒常性の研究 運動の意味

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運動っていうと、遊びや道楽の様な響きがある(笑)。
水泳や、テニスや、サッカー、野球、特にしなくとも生きることには関係しない。

では、「家が火災になり逃げる」「山で熊に襲われる」「狩りをする」と言った場合はどうだろうか?
本来、運動というのは危険が迫った時の反応である。
命がけなのである。


無論、喜びでもある。
飼っている犬が獲物を擬したヌイグルミを飼い主の目の前に投げるときに、スポーツの起源を感じる。仲間とともに狩りをする喜びを見ることも出来る。







血糖値は非常に重要だ。低血糖に陥るとあっと言う間に死ぬ。

どんな生き物でも、細胞は常にブドウ糖を取り込んで生きている。
糖尿病の場合は、「随意筋・脂肪細胞」はインスリンがなければ取り込めないが、それ以外の組織はインスリンの許可がなくともブドウ糖を取り込み使う。




運動をすると、血糖値はインスリンや、インスリン抵抗性などとは関係なく下がる。
これはgult4と呼ばれるグルコーストランスポーター(ブドウ糖運搬役)が運動時にブドウ糖を(インスリンの許可無く)細胞内に取り込むからである。

今日も運動をした。プールで300m泳いだ。
時間の経過と血糖値を見るといかに細胞が運動でブドウ糖を使うかわかる。

160mg/dlあったものが30分泳ぐと100mg/dlに落ちる。
面白いことに、110mg/dlで泳ぎ始めても、せいぜいで90mg/dlまでしか落ちない。
運動は運動、同じように体中の細胞はブドウ糖を「食う」のである。
糖尿病の私も、正常な皆も同じように。

では何故低血糖にならない?
肝臓がブドウ糖が少なくなり、低血糖の危機を察知すると、ブドウ糖を放出する
そして足りなくなる量を予測して血糖値を維持するのである。



トライアスロン低血糖が起こったり、マラソンで走りながらバナナ食べたりするのは、強度の強い運動で低血糖が起こることを意味している。僕の水泳の記録はこちら
瞬間的な運動は急激にATPを代謝(注1)する。同時に間質液(細胞の浮かんでいる体液)から一気にブドウ糖を取り込む。














疑問はここからである。

ドンドン下がっていく血糖値が拮抗(下がり止まる)する点がある。
僕の場合は現在は93〜100mg/dlの間くらいである。

随意筋細胞の貯蔵庫が十分満杯になって、もうこれ以上取り込まないという所で、肝臓はブドウ糖の放出を停止するのである。

何が、この目印を覚えているのだろうか?
いろいろな研究を読むが、はっきりしたことは見つかっていない。








生活をする上で、とても面白いことである。
正常な人は、この変動は殆ど見えない。
つまり劇的な血糖値の低下と、押上が同時に起こっているのである。






実はこれに関しては、インスリン投与起因の低血糖では肝臓は、危機を感じて血糖値を押し上げることがない(と思う)。
だからインスリンや薬剤の過剰摂取で死んだり入院したりするのである。

インスリン起因低血糖対策としては、飴なめろとか、救急搬送してブドウ糖の点滴しろとか言われるが、皆後手後手である。


身体が、血糖値の恒常性をいかに維持しているのかという事がわからないままに「血糖値を下げる劇薬」ばかりが開発され続けている。


ブレーキのない車を作り続けているようなものだ。


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注1 : 代謝
この概念がわかるまで随分時間がかかった。
燃焼も代謝も同じように安定している分子が別な分子に変わることである。
分解と合成と呼ばれることが多い。
しかし、「代謝・燃焼」の反応式の右と左の分子量は変わらないのである。
燃焼は、高熱をかけることで、雪崩のよう分子の分解が生じて、連続的にエネルギーを放出することである。

体内での高分子化合物の代謝は全く違う。
『脂肪を燃焼させる』という表現はこのことを理解していない証拠である。
『カロリー』という尺度も同じである。
何かの本を読んでいてこの2つの言葉が出てきたら、その作者は無知であるか、読者を馬鹿にしている(笑)。

体内では『酵素反応が連続的に起こり高分子化合物が変化していく』そのプロセスでエネルギーが発生する。








注釈と言うか何というか......

通常、安静時においては1時間で10gのブドウ糖を使うと言われている。
肝臓には10時間分のブドウ糖が貯蔵される。
つまり、何も食べなくとも10時間は低血糖にならないのである。

しかし、身体は常にブドウ糖が必要だ。
肝臓の貯蔵は、一種の緩衝帯だ。
食事で入ってくるブドウ糖は肝臓の緩衝帯を満たしながら血液に流れる。


それでは足りないから肝臓では「タンパク質(糖原性アミノ酸)を材料に脂肪(ケトン体->アセチルcoa)をエネルギー源として」ブドウ糖を作るのである。糖新生と呼ばれる「代謝」である。



「随意筋細胞」においては、糖新生は行えない。必要な酵素を欠いているのだ。
肝臓(と少々腎臓)でブドウ糖は作られて血液に放出される。
血液中のブドウ糖は、必要とする細胞に取り込まれて、ミトコンドリア代謝されadp<->atpのリサイクルに使われる。
酸素を使い、水と二酸化炭素が作られる。








1分子のブドウ糖を作るために、6分子のATPが使われる(代謝される)。

1分子のブドウ糖は解糖系で2分子リサイクルされ、電子伝達系(ミトコンドリア)で36分子リサイクルされる。