父と暮らす 頭のアトピー、叔父さんへの訪問

数年前から、父の額には湿疹が出来て、いつも痒がって触る。
一緒に食事をしている時の「3大悪癖」だった。(あと2つは「鼻の穴いじり」と「箸での歯に挟まったカス取り」である)
いくつも、薬屋で軟膏を買っては付けていた。
痒くなったら使用していた。

結構悪くなったので、妻が、無理に医者に引っ張っていった。
ステロイドの強めの薬を処方された。
無分別につけるとマズイなあと思っていたら、妻が塗るという。
ケラケラと笑いながら、頭のほとんどを占める額に塗るのである。
「ここ悪い、ここも悪い」と言いながら、一人では付けられない所に付け撫でるのである。
テラテラに赤く光るのである。


父は、照れくさそうに、「どこまで額かわからんだろ」などという。
妻は「なに言ってるんだね、全部額だがね」と笑う。



父が帰ったと、「オヤジは幸せもだ」と僕は言った。

父は、がんこで、その言動は人を傷つけるけることも多かった。
父母が原因で何度も、離婚の話し合いをした。


しかし、母がなくなり、父も、妻も、僕も変わった。
「やがて僕の頭に薬塗ってくれる嫁は来るかねえ」と妻に聞いた。

「あんたは早く死ぬんでしょ、付けてもらいたかったら長生きしな」と言い、妻は嬉しそうに笑った。


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父の兄が近くの施設で暮らしている。
多くの施設では問題在る入居者に「薬(精神安定剤)」を飲ませるが、叔父さんは問題なく、元気にお暮らしである。
いつも、実にウイットにとんだ会話を楽しませてくれる。昔のことを聞くと兄弟で掛け合い漫才を始める(笑)。

とても楽しい。


1-2ヶ月に1回はお邪魔することにしている。
12月にお会いしたので、2ヶ月ぶりである。
10歳年上だから、98歳だ。すでにこの施設での最年長だという。

 
 

施設では、感染予防のために玄関でお会いした。
お雛様である。

足の血行が悪いと言って見せてくれたので、触らせていただいたら、「温かいなあ、きもちがいいなあ」と喜んでもらえた。


僕の足も痺れが強い、脛も叔父さんの足より遥傷んでいる。擦ってもらうと嬉しい。
やはり僕の末端神経症は治らないのかなあ。




年取ってすべてが先に逝き、何も意味がなくなった時、兄弟が生きているということはうれしいものだろう。

この映画をときどき見返すのである。

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僕にも、人間の兄弟が欲しかった。
母は僕が生まれる4年前にカエルを飼いだした、
そして、母を苦しめて死期を早めやがった。

今でもどこかでケロケロしてるんだろう。思い知らせてやる。