母の針供養、おやじの昼飯
母は帯を縫って僕を育ててくれた。
当時の金で1本1万円である。
世の中が平和になり、景気が良くなり、和服が流行って、着物の需要が大量にあった時代である。
茶箪笥を整理していたら「古ぼけた瓶」が出てきた。見た瞬間に分かった。折れた針を入れていた瓶である。
実に懐かしい。一気に思い出が蘇る。
和裁を止めた後にも、取っておいたのだなあ。
時折、マチ針が残っているのを見つけて、『針の神様』にお礼を言っていた姿を思い出す。
この針箱はタンス職人だった母の父(僕から見たら祖父)が作った。
秘密の隠部屋がある。なにか入っていないかと見たが、昔の空気だけが入っていた。
遺影の前にお供え(?)した。沢山のしつけ糸と大きな和鋏と裁ちバサミが残された。
これは、ニットの編み機で使う道具である。小さいころ僕はこれを『武器』に見立てて、僕にしか見えない怪物と戦っていた。思い出す。
編み機の教室と、販売を行っていた。しかし、市販の洋服が売られだすと下火になる。
その時期に彼女は和裁を始めるのだった。
僕の水着も母の手作りのニットだった。可愛いというかなんというか。
当然、左側のモッコリ君。
父の昼食用に間仕切りの有る皿を買ってきた。
僕も家内もいない可能性があるので、おやじの昼飯は作って実家に持っていく。
朝が遅いので、昼も遅くなる。
朝飯の残りを小さな握り飯にして、オカズを一緒にする。
昼はいらないというが、これがないとお菓子を食べるようだ。
お菓子よりこちらの方がいい。
少し残ると思うが、「夕食をうちで食べた後で少し飲むとき」にツマミになると思う。
丁度いい。
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