毎週のことだが、楽しい夕食

毎週一回は実家で父母と夕食を食べることにしている。
毎日作っているのだから、当然ながら、料理は僕と妻が作る。

誰かを理解する上で、その人がどんなものを食べているのかを知ることは重要である。


毎日の朝夕にヨーグルトに果物を入れて食べてもらっている。

半年近く続けて、二人の健康状態が目に見えて良くなってきているのがわかる。
何が一番美味しいかと聞くと、あの白いのが一番美味しいと答えてくれる。
砂糖か。缶詰のシロップ(果物が缶詰の時)を入れることが多い。

食器の回収に入った時に何を残しているかいつも確認する。
時折、ヨーグルが残ったりしているので(多かったのか、意図的に次の食事に回したのか)謎であった。

今日は砂糖を入れないでオレンジとバナナの甘みだけで作っていった。



見ていると、バクバクとヨーグルトを、おかずにして食べるのである。
美味しそうに食べてもらうのは、見ていて気持ちが良いものである。


これだけ食えば元気になるはずである(笑)。


冗談を言えば笑う。
「お父さんのお腹はでっかいし、僕のお腹の中身は真っ黒だ」と言えば大笑いをする。
皮肉、隠喩、暗喩、当てこすり、誇張や矮小、様々な言葉の使い方から意図を察することが出来る。歳相応の記憶力、判断力、瞬発力である。


最近は、「楽しかったことを思い出し」遊びをする。

人生で、楽しかったことを順に話していくのである。
これだけ何度も話を聞いいていても初めて聞くことが有るのは不思議だ。


今までで一番楽しかったのは、編み物教室を開いてたくさんの生徒に教えた時の事だそうだ。
旅行に行ったり、集まって美味しいもの食べたり、大騒ぎした。

昔は、女性は編み機を持ち、家族の服を作っていた。
やがて市販の安い服が売られるようになり、編み物ブームは消える。
母は和裁を習い、「帯を1本縫っては1万円」と言う商売を始めた。
どんどんと「新しいもの」が出てくるから学び続けて、最先端を走り抜けた人生である。

「おまえの商売(ソフトの開発)とおんなじだね」と言う言葉でこの話は終わる。



まさにそのとおりである。
新しいことを学び続ける事こそが『商売』というものなのだろう。
母は「起業家」であり、「イノベーター」であった。


土曜も日曜もなく毎日夜中まで「帯」を縫っている姿が僕の記憶の最初である。
角や返しや、柄合わせ、一回印をつけたら取り返しの付かない真剣勝負。
細かな手作業、針使い、見たこともない道具を使い思わぬ効果を出す。
横で見ていると「ほら出来た」といって表を返すときれいな柄が現れる。
まるで魔法のようだった。
友達のいなかった僕には母の仕事を見ているのが楽しかった。


時折、どんなに苦労して(自分で考えた方法で)この処理をしたのか僕に話してくれた。
時折、僕も、妻にプログラムの中身の話をする。


どんなに苦労して新しい方法を見つけ出したのかを自慢たっぷりにに話す。
残念なことは、具体的な内容を分かってもらえないことである(喜びは分かち合えるが...)。
最近社員の、力がついてきたので分かってもらえるから嬉しさひとしおである(笑)


着物とプログラムはよく似ている。
綺麗に出来て当たり前、上手く動いて当たり前なのである。


僕に人生で一番大事なことを教えてくれたのは、母の背中だった。
そして、帯作りの内職で僕を大学に入れてくれた。



前段の中央が母である。
写真の中の人達は、若くて、活発そうで、希望に満ちている。

すでに、ほとんどの人とはもう会うことはない。


母はボケてきた、認知症だとと多くの人は言う。本人でさえそういう事も有る。
早く治療するために施設に入れろと平気で言い放つ輩もいる。

僕は絶対に施設に入れたりはしない。
僕はおかしいだろうか?介護の大変さをわかっていないからそんな綺麗事を言うのだろうか?


母は、「死にたい」と時折言う。それを聞いて自殺願望があると思う馬鹿者もいる。
僕はどうして死にたいのと聞く。
「お前たちに迷惑かけて申し訳ないから死にたい」と母は話してくれる。
僕は応える。僕が生まれたのはおかあさんのおかげなのだから、何も迷惑でなど無い。
そうすると「死にたい」という言葉は彼女の口からでなくなる。

くたびれたり、仕事が辛い時「死ぬほど」という言葉をつけても不思議はあるまい。
そのくらいも分からない馬鹿者が「ぼけている、認知症だ」と老人を貶める。




母に言われた、「おまえの姿を見て子どもは育つ、子供達はお前が私にしてくれたように、してくれる」と。



ここ1っヶ月くらいのことである。
時折、父は、散歩がてら、車なら近い地元のスーパーに行って天ぷらやエビフライを買ってくる。
大体2−3日もつそうである。

スーパーで買物などしたことのない父である。
「最初は勇気が必要だったろう」と思うと涙が出てくる。



大体1合の日本酒を飲むのだが、僕が一緒に食べるときは少しだけ酒の量は多くなる。
糖質制限中の僕も、おやじの一升瓶から少しついで頂くとおやじは喜ぶ。



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