かぐや姫って嫌なお話だなあ。しかし、その本質は社会における余剰の分配の話であり、通貨としての女性の問題である。社会システム論的に見た「かぐや姫」再考。

このエントリーは「かぐや姫問題」に入ります。


かぐや姫と言うお話は、一族(そこに属する女性)にとって結婚という制度が就職先で有ることを実感させる。

そもそも、社会の生産性が低い時代は、余剰がなく、余剰を再分配する社会システムも規模は小さかった。

しかしながら、社会の生産性が高まるに連れて規模も大きくなり、再分配のルールも複雑になる。
僕は、それが固定化されるのが身分制度だと考える。

徴兵という名の公認された奴隷制度を持つことで兵力・警察を操り、税と言う名の公式の略奪を行う。
行政を持ち、その権威の元を身分制に求める社会が確立したのが平安時代であろう。そして今に続いている。

宗教界という対立し、異なった価値観を持つコミュニティも同時に存在していた。

その2つのコミュニティが厳しい対立を描いている。



かぐや姫は小さなコミュニティで生まれ育つ、そのままならば問題なかっただろうが、爺さん婆さんが宝くじをあてる。
まあ、その金を元にして、上流の身分に成り上がろうとするのである。

両親は姫の幸せを願ってと言いながら、自分たちの幸せが目的なのである。
まるで娘をスターにするステージママ・パパのようである。子どもを大学に行かせようとする教育ママ・パパのようである。



身分的に上に上がるには当然、婚姻である。
かぐや姫は性的に強烈な魅力が有るから、上流階級の男たちは自分の継続的な独占物としようと考える。
まさに、オークションである。
一番高い財産を持つ貴族にに売り、生活の安定を図るのである。
これは当然であるし、今でも多くの結婚がこの原則に従っている。
おかしなことでも、いけないことでもない。

あらゆる哺乳類共通の(種を守るための)本能であろう。



この、身分社会の最高位の帝が出てくる所で「元の物語」は終わっている。
ものと物語が清々しさを感じさせるのは、月の世界(価値観の違う世界=仏門)に入るという決断をかぐや姫が下すからである。
俗世のルールの中で、女性が家族の通貨として扱われることに対してのアンチテーゼである。

実際、宗教界と俗世会は常に厳しい対立を持っている。
信長があれだけ宗教界と戦い虐殺したのは、2つのシステムが拮抗していたからである。

今の社会も、「新自由主義グローバリズム)」対「地域循環経済」の対立として考えれば、全く色あせていない問題である。



僕の大好きな瀬戸内寂照さんにご意見をお聞きしたい(笑)。



この映画の問題は、中途半端に軽薄な思い込みを反映させているところであろう。

お麻な馴染みとの不倫、駆け落ちをかぐや姫が図るというところなど最悪である。
子どももいる幼なじみを自分の性的な魅力で籠絡して、やはり自分は貧しい生活に戻れないと戻る勝手さ!
不倫セックスの場に妻子が飛び込んできたらどうするつもりだったのだろうか?

想像するさに恐ろしい。




ジブリかぐや姫における「月の世界」は何のメタファーだろうか?
元の物語が持っているような「俗世<->仏門」という対立項目ではないよなあ。



そもそも、女性が自由に生きるという価値とは何なんだろうか?
考えさせられることしきりである。
金持ちと結婚して、好きだと思った男と「カジュアルセックス」をすることなのだろうか?
まるで、テレビに出る勝ち組タレントの話ではないか(笑)


僕にはそうは思えない。

親の生きた土地で、ともに行きて、いつか自分も年をとった時に子供達がそばに居てくれる人生。
自分がこの土地とともに生きていることを感じながら人生の最後を迎えること。
どうせ、年老いて、それまでの人生の全てを失い、死を迎えるのだから。





残念ながら、ジブリ版のかぐや姫で帝より上の階級に登っていったようにしか見えない。
日本で上流階級入りを狙っていたが、ミス・ユニバースで一等になってアメリカの大富豪と結婚したパターンである(笑)。
アメリカの超絶階級(全く規模が違う価値の世界)に自分一人入っていって、日本のシステムとはサヨウナラとしか考えられない。
幼なじみとのセックスは道すがらの駄賃である。

そう考えると、都の屋敷に作った箱庭を蹴り崩すシーンなどは、あの土地を所有して好き勝手に遊びたいというふうに考えればわかる。
イギリスの貴族が広大な土地を自分のものとして狩りに興ずるようなレベルだったらよかったんだろうかねえ。

まあ、帝なら出来たのだろうか、それでもビル・ゲイツにはかなうまい。




ラストで青くて丸い地球を振り返るところなど、爆笑である。

「あーあー、あの程度の世界で満足しようなんて笑止千万だわ。私にはもっと贅沢させてもらえる世界が待っているのよ。」
そんな感じである。

年寄りの、浅くて軽い世界観を押し付けられたようで不愉快を通り越して呆れ果ててしまった。

長い金曜の夜の我慢大会だった。


しかし、ジブリもこんな映画作るのなら、「ナウシカアニメージュコミックス 忠実版 全7巻」を作って欲しかったなあ。

久しぶりにアニメージュコミックス読んでみよう。


やっぱり僕は「ジブリ嫌い」である。

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