ガープの世界 とても素晴らしい映画 mixiから引越し2006年09月18日 05:16

この映画は素晴らしい。
暴力とセックスについて描かれている。
人間を描いた時、その両者は外すことが出来ない。


The World According to Garp - Original Theatrical Trailer


ときど見返すが、いつも辛くて仕方がない。
それはいい映画の証拠だ。

2005 ジョージ・ロイ・ヒル ロビン・ウィリアムス, ロビン・ウィリアムス, グレン・クローズ, ジョン・リスゴー

ジョージ・ロイ・ヒルの映画って大好きなものが多くて、「スローターハウス5」、「明日に向かって撃て!」「スティング」ちょっと通好みで「華麗なる飛行機野郎」みな不思議な透明感が有って美しい。この映画の中で家に突っ込んで来る飛行機のパイロット(ジョージ・ロイ・ヒル)が彼だと何かで読んだなあ。

映画見てビックリするくらい感動して、原作(当時サンリオ文庫で翻訳が超悪評だった)かって来て、英語の勉強しようと言うことでペーパーバックかってきたっけ。

原作はとても読み辛いけど(新潮文庫版は良いかもしれない)、下巻買う事をお進め。エピローグの所が凄く面白い、物語が終わった後の登場人物の死までの道のりを描いる。映画が少しだけ使った角度から見ることできて僕は大好き。
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ジョンリスゴーも最高、この人この後色々と出ているけど、この映画が一番素敵だなあ、というか、この映画以外はちょっと悲しいものがある。
ガープの奥さんがとてもきれい。特に、大学の授業している時のタートルネック着た姿は素敵だなあ。
グレンクロースもロビンウイリアムスも映画に出始めたばっかりの頃のお話で、この映画がきっかけでガンガン売だす。しまいにゃあ副大統領にまで成っちまうんだから大したもんだ。

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この物語の中で繰り返し論じられるのは『暴力』であり、『マイノリティ』である。

『マイノリティ』と言うのは、少数であることだけではなく、たゆまなく傷つけられる存在を言う。
そしてこの物語では『マイノリティとしての女性』の存在を描いている。

この物語は小さなストーリが交差し合い、互いに影響を与え合いながら絡み合って行く。

暗殺、ペニスの切断、子供の片目の失明、子供の死、『エレンと言う女性をレイプして、証言されることを恐れた犯人はエレンの舌を切り取る。「その犯人の行為に憤った女性」は自らの舌を切り取ることで男に対して抗議を続ける。』なんて救いのない物語だろうか!!!
抗議をする為に舌を切り取る、何と言う逆説、何と言う自虐、そしてその姿には自分でいることが辛くなる。
「男=レイプする側の存在」であることが嫌になる。

そして、この物語をジョージロイヒルは素晴らしい透明感で描いている。

エレンとガープが出会うシーンには何と深い透明感と悲しみの有ることか!
エレンの瞳の悲しさと赦しは僕の心を少しだけ癒してくれる。

あのエレン役の人は何と言う女優さんかなあ、本物のエレンかもしれない。


ちなみにこの辺りの物語は原作と全く違うが、「映画は凄い!!」と思わせてくれる実例だとおもう。
(無論小説も凄い。)

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人生を生きると言うことは人を傷つけることであり、癒すことなのだと感じる。
傷つけた自分が癒す自分になるのだ。

ガープの母は生涯に一度だけ、死ぬ直前の敵軍兵士をレイプして精子を受けてガープを生む
欲望によらない受胎、快感を伴わない受胎はマリアと同じ、その子ガープはキリストなんだろうか。
ガープの母は『欲望こそが全ての間違いの源である』と語る。その通りだろうなあ。

子供を産む力は欲望と表裏一体、子供を持つことは聖なることであると同時に、欲望に飲み込まれる事を意味する。
僕らは、聖なるものと淫猥なるものが渾然とした世界に生まれるのだ。

「生まれ落ちたる母の股ぐら」って、誰の言葉だったけ。

母のセックスを想像することは男に取ってはタブーであり、欲望の暗源なのかもしれない。

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夫は妻を裏切り、妻は夫を裏切る、そして互いに傷つき、癒し合う。
母は子を裏切ることはないのだろうか?
子は母を癒すことが出来るのだろうか?

様々な隠喩が隠された物語は見るたびに異なった姿を見せてくれる。

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ガープの母がヘリコプターに乗る時にガープは母に「父親は必要でなかった」と叫ぶ、彼女にその声は届かないが、それは彼女が知っていたこと。僕はこのシーンで涙が止まらない。

そして、死は突然やって来る。全ての人間にとって死は突然である。

『人間は死に至る患者である』『いつか死ななければいけないから精一杯生きなければいけない』何処かで聞いた様な警句であるが、ガープの世界では「その通り」と素直に思える。

そして僕らの世界でも、それはその通りなのだ。
素直に思えるようになりたいものだ。



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