悪名 mixiより引越し2006年09月15日 00:36

悪名 [DVD]

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続・悪名 [DVD]

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2003 田中徳三 勝新太郎, 勝新太郎, 田宮二郎, 中村玉緒, 水谷良重, 浪花千栄子

反戦映画として最高の出来。
国家は国民の命を燃料にして財閥を太らせる装置である。

この映画は素晴らしい。
死んでいった若者をヒーローにして口を拭っているような昨今の戦争映画は恥を知るべきである。



勝新太郎が望んだのかどうか分からないが、この映画は反戦、反軍隊のメッセージを強烈に発している。

果たして、彼がそのような思想を持っているのかどうか分からない。しかし、兵隊ヤクザとこの映画を『対(続けて)』で見た時にあたかもこの両方の映画が相互に呼び合っているように見えるのは僕だけではないと思う。

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悪名は、河内の暴れん坊がその力を認められて、大阪のやくざの世界で成り上がって行く物語である。
多くのやくざ映画には、青春物語と軌を同じくするように、若者の力が道を開くが、老練なプロがそれ以上の力を持って、若者の思惑を潰すと言う類型を持っている。
この映画は一言で言って、その類型に入る。勝新太郎が、田宮二郎と結びついて、二人で縄張りを広げて行って、最後にはもっと大きな勢力にやっつけられると言う物語である。

これだけなら、仁義無き戦いをはじめとする多くの任侠ものとさほど差もなく、僕はレビューしたいとは思わない。ここから先が大事なのである。

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悪名シリーズには、悪名の後で続悪名と言う映画が出来て、その後に(三作目に)新悪名と言う映画が存在する。そしてその後には満天の空の様に作品が連なるのである。

レンタル屋さんで借りる時は間違えないでもらいたいのだが、必ず、悪名と、続悪名をセットで借りてもらいたいのだ。それ以降はいまのところ無視していい。

実際、この2作は密接につながっていて、切り離すことが出来ないのである。
上映時間の問題かどうか分からないのだが、二つに分かれているのである。


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悪名は、勝新太郎がヤクザの世界に入って、田宮二郎と出会い、ヤクザの世界のルールを学ぶ部分である。続悪名は勝新太郎が縄張りを広げすぎて既得権益のある組織と戦い、破れると言う部分なのだ。
そして、続の方のラストで、勝新太郎は招集されて戦争に行くのである。
ワンカットなのだが、戦場で勝新太郎がひどい目に有って、やくざの喧嘩など可愛いものだと言うのである。そのシーンは非常に心に残る。

ヤクザの縄張り争い自身が相当ひどいものなのだが、それ以上に戦争がひどいものなのだと語っているのである。

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兵隊やくざ」のなかで勝新太郎は娑婆で人を殺していると言うのである。なるほど、それに相当するシーンも有るなあと思われる。
兵隊ヤクザは、招集された悪名が戦場で繰り広げる物語と考えると筋が通るのである。

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それ以上に僕が気に言っているのは、田宮二郎勝新太郎のホモセクシアルな人間関係の描写である。
勝新太郎は。義理とかヤクザ同士のさかずきとか大嫌いなのである。
そう言う形式的な人間関係はもの凄く嫌うのであるが、生粋のヤクザの田宮二郎は大好きなのである。そんな田宮二郎に、「杯なんか何でもええやないか」と勝新太郎が言うと、田宮二郎が本気で怒るのである。これ本当に怖いんだから...どうなるかと本気で怖いなあと思っていると、勝新太郎が「お前とおれ、兄弟でええやないか」って言うのです。そうすると、.......なんだなあ。
このシーンの田宮二郎の目が凄くいい。きっと、田宮二郎勝新太郎が本当に好きだったんだろうねえ。この映画には勝新太郎の実生活の奥さんも出て来るけど、やっぱ、田宮二郎勝新太郎の恋の物語なんだよね。

カミングアウトが出来る時代に田宮二郎も生きれれば良かったのになあ。

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後もう一つ僕が大好きなのは、田宮二郎勝新太郎に惚れ込んで、いままでいた組を抜け出すところ。このシーンでの捨て台詞が最高、田宮二郎が『裏におるやさかいね、ドツキにおいで』って言うんだけど、これがカッコいい。何度も真似するんだけど、誰にも似ていると言われたためしがない。けど、僕と同じ心がある人ならきっと真似たくなると思う。

いつか、見る機会が有ったらきっと素晴らしいと思う。僕は日本の映画のなかでは好きな方に入る。座頭市も好きだけどね。やっぱり悪名の方が素敵だなあ。

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続以降の新とかのシリーズも無論面白いし、焼け跡の当時の世相を感じることが出来ていいけど、やっぱ、最初の二つにはかなわない。

305208