バレンタインデーの思い出
僕はおやじが50年勤めた鉄工所に4年近く勤めた。
バレンタインと言うと、そこ工場の食堂での事を思い出す。
昼休みになると、工場に各所にいる作業員が集って来る。
皆無言で、思い思いの席に座る様に見える。
しっかりと場所が決まっているのだが、最初は気がつかない。
新入りは気をつけないといけない。
三交代だから、微妙に顔を合わせる人は違う。
皆黙々と食事をする。
360円の弁当がおかれていて、作業を切り上げて来たら順に弁当をとって行く。
食事が済むと横になったり、自動車に行ったり、工場の休める所にいったりする。
近くに食堂など無いから、外に食いに行く事など考えも出来ない。
バレンタインデーにはチョコが中くらいのザルの様な入れ物に入って一番前のテーブルの上に置かれているのだ。
聞いた事も無いメーカーの一つ一つ小分けになっているチョコである。
これは何なんだろうか?
ああ、こう言う世界も有るのだなあと思ってしまった。
中学や高校を卒業して50年ここにいなければならない世界なのである。
学校は3年で卒業だが、ここには50年生がいて、長い長い階段があるのだ。
義理チョコを女の子に手渡されていた時の事を思い出す。
今も、あのてのチョコを見ると工場でのバレンタインを思い出す。
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