子どもたちに教えたい事

昨年、高校の授業を受け持った

社会に出たら毎日が試験である事を子どもたちに教えたいと思った。


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僕は「新評論」と言う出版社に入った。
採用が決まったのは大学の卒業まであと、数ヶ月という1月の事である。

昔から、出版の世界に憧れていたのでもの凄く嬉しかった。

しかし僕は、真剣でも、まじめでもなかった。

色々と仕事を与えられたが、何一つ上手く出来なかった。
一つ一つの失敗を糧に出来なかった。


「品出し」と言う仕事があった。
大体1−2時間をかけて書店からの注文スリップを持って倉庫(8畳×3室 の広さ)中に有る本を選んでくるのである。
新人の編集部の社員人間(5人)が変わり順番に仕事をする。

僕は中々コツを覚えられなくて上手くやれなかった。
他の連中がある程度出来て卒業して行ったが、僕はかなり続ける事になった。

この仕事はカッコ悪く、辛かった。

或る日やらないでいいと言われた。
こいつは駄目だと見切られたのである。


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仕事の内容は単純であったのだが、真剣にやらなければ上手くやる事は出来ないのだ。

僕は真剣でなかった。
こんな仕事嫌だなあと思い、細かい失敗が多かった。
2-300冊くらいの注文を出して行くのだが、作った本がお金に換わる一番大事な仕事だと言う事を理解出来ていなかった。
本の名前を覚えると言う大事な機会を失ったのである。

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どんな仕事であろうとも、真剣に立ち向かい全力を持って当たる事が大事なのである。
会社の上司は、上手くやるかどうかなどと言う事は見ていない。
全力で当たっているかを見ているのである。

そして評価されるのである。

会社員の生活は細かい試験がつながっている。


自分より馬鹿な奴が新たに入社して来るが、じきに追い越される。
なぜか分らないままに自分は上司に評価されない。
与えられた仕事はそつなくこなしているのにである。


自分が悪い事に気がつかなければならない。

真剣に仕事に立ち向かっていない事に分っていないのである。
そつなくこなせる仕事しか与えられていない事に気がつくべきなのである。
自分追い越して行く奴らは、つまらない仕事でも真剣に向き合っているだろう。


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「パソコンを上手になる方法」をよく聞かれるが、「自分が悪い」と思う事である。
「パソコンが悪い」と思っている人間は成長しない。
これはパソコンに限った事ではない。

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10分間のタイピングの練習をするのだが、その時に僕ははっきりと言う。
クラスでの順位を競うのではない。
昨日の自分より上手く打てるようになったかである。
競う相手は自分自身なのだ。

10分間、真剣に仕事を出来るかの練習なのだと言う事を理解するのだ。
どんなにつまらない仕事に見えても、真剣に取り組む事が重要なのだ。


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学校は退屈な場所である。
試験や学業にまじめに取り組もうとしない生徒に何を言っても無駄である。
モチベーションを与える事は一番難しい。
なぜ退屈なのかというと、自分自身を見つめさせることができないからである。

学校を出た後で飛び込んで行く会社という場所がどういう所なのか知らないままに飛び込んで行く子どもたちは勇敢である。


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タッチタイピングがいかに人生に役立つかを教えるが、それを実行する子供は10人に1人である。
僕は出来ない。40すぎてから始めたから癖に出来ないのだ。(下手な言い訳である)
それほどに毎日続ける事は難しい。


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僕は教えてはいるが、出来なくて良いと思っている。
まあ、10分で1000文字打てれば充分である。
そのくらいならば、タッチタイピングでなくても打てるだろう。

10分間の真剣さの勉強。
それがタッチタイッピングである。



こんな話しをして、タイピングの試験をするとみな真剣に立ち向かう。
そんな体験を彼らに与えられたら素晴らしい。




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